2019/03/12
学校珍百景:卒業式での女性教員の袴
●卒業式で袴をはく女性教員地域によって若干の違いはありますが、卒業生の女性担任が、卒業式において袴をはく習慣がある地域が多いです。
女子大生が自分の卒業式において袴をはくことはよく知られていますが、最近の小中学校において、女性担任が袴をはいていることはあまり知られていません。
ということで、卒業生の女性担任は、卒業式当日、自腹で早朝から美容院に行き、数万円かけて袴をレンタルした袴を身につけ、高いぞうりをカッポンカッポン言わせて出勤・登校してくるわけです。
ちなみに、男性担任は、結婚式の時と同じように、礼服に白いネクタイですが、最近では、男性担任も袴で出席することが増えてきたようです。
なお、担任ではない他の学年の職員は、普通の正装であることが普通です。卒業学年の服装よりも目立った服装をするべきではない、という考え方があるようです。
また、校長はモーニングコートを着るようです。
●学校現場での袴は教員が先
さて、学校現場における女性の袴について調べてみると、女性が袴をはくようになったのは、学生ではなく教員が先だったようです。明治から大正時代に女子学校の教員が着用していたのがはじまりだということでした。そしてそれが次第に学生の制服として着られるようになっていったようです。
女性教員が袴をはくようになったのは、おそらく着物よりも動きやすいからだと考えられます。当時から、動き回らなければならない職業だったのでしょう。
そして、女学生が卒業式で袴をはくようになったのは、教育を終了し社会的知識と気概を習得した者の正装という意識からだったのではないでしょうか。
現在でも伝統のある女子大などでは、権威を誇る教授が、卒業式の服装として「袴姿が望ましい」とコメントしたりというエピソードもあるようですが、一般的には流行だと考えられます。
●「ハレとケ」の世界観
さて、もう一つ忘れてはならないのは、柳田國男氏が見いだした、「ハレとケ」という日本人の世界観です。
ハレ(晴れ、霽れ)は儀礼や祭、年中行事などの「非日常」、ケ(褻)はふだんの生活である「日常」を表していて、 "ハレ" の場においては、衣食住や振る舞い、言葉遣いなどを、 "ケ" と区別するという考え方です。「晴れ着」という言葉は、ここからきています。
卒業式はこの場合「ハレ」にあたりますので、普段とは異なる改まった衣装で、卒業を祝うという世界観です。ゆえに教師も、普段とは異なる、あらたまった服装で出席するわけです。その服装が、女性担任の場合袴だということだと思います。
●祝う服装は自由
ここで注意しなければならないことは、卒業を祝う気持ちは誰もが同じであるし、その表し方についてはそれぞれ自由であるということです。
もちろん、服装が突飛であったり、その場の雰囲気を壊すものであってはならないと思いますが、 "卒業式での女性担任は袴で参加するべきだ" とか、 "袴じゃないから祝う気持ちが足りない" だとか考えるのは大きな勘違いであり、間違いであるということです。
しかし残念ながら、スーツで参加した女性担任に対して、一部の保護者から、 "祝う気持ちが足りない" という的外れな批判が起こることがあるのが現在の教育現場です。
卒業式が「儀式的行事」というふうに学習指導要領で定義され、所作や雰囲気ばかりが重視されるようになってしまいました。服装もその一つだと思います。
そんな中で私たちは、子どもたちに伝える大切なことを軽視してしまってはいないでしょうか。
「動くな!」「音をたてるな!」と指導?する前に、子どもたちとの関係、子どもたち同士の関係の中で、「卒業」をどう指導するかについて、こんな時代になってしまったからこそ、見つめ直してみる必要があるのではないでしょうか?その上に立って、教師の服装についても考えてみたいものです。