2021/02/28
#コロナ禍の学校づくりと生活指導の課題 (まとめ)
来月発売の「生活指導」誌4-5月号の冒頭論文、「コロナ禍の学校づくり・生活指導の課題」(山梨大学 高橋英児)を先行して読ませてもらいました。その読書メモをこのブログで3回に分けてアップしました。本日、そのまとめと感想です。高橋(英)氏によると、
-----↓ここから-----
コロナ禍で発生したように見える日本の危機は、実はコロナ前から問題にされてきたことです。子どもの貧困の問題しかり、虐待の問題しかり、そして教育格差(教育の機会均等)の問題でもあります。それらの問題がコロナ禍によって、より明確に可視化されたととらえて良いと思います。
日本政府は、コロナ禍の中でより明確に可視化されたそれらの問題を、国民個々の自己責任で耐えさせ、それが耐えられない人々から切り離していく政策をとり続けています。そしてその中から、人々を相互監視や差別、排除の関係へと向かわせることになっています。
学校再開後の学校現場では子どもたちの感染防止対策と学力保障との間に矛盾と葛藤、そして教師の大きな苦悩が生まれました。しかし文科省は学校現場に、人的保障・環境保障をしないままに学習指導要領全面実施を徹底させることを結果的に強要し、学校・教師・家庭に多くの負担を与えることになりました。
文科省が学校再開後、感染予防対策が呼びかけながらも、学習指導要領の全面実施の圧力が強かった理由は、今回の学習指導要領が「改正」教育基本法が目指した 「国家の統治行為」としての「義務教育」を全面的に実施する最初の学習指導要領であるということです。
そして、コロナを「口実」にして学習指導要領の方向性を実現すべく、コロナ前に準備してきた施策を進めていると言えます。その二つの柱は、
「GIGAスクール構想」(文科省2019年12月)
「未来の教室」(経産省2018年度~)
であり、これを『令和の日本型学校教育』(中教審答申素案)としています。
苅谷剛彦「コロナ後の教育へ」によると、それらは「文科省が経産省とともに進めてきたGIGAスクール構想をさらに日本の教育全体に拡張するプラン」であり、「AIやICTの活用を全面展開することで新しい社会の実現をめざすSocirty5.0の政策構想に適合する教育をつくり上げようとする政府の明確な意思の表れ」であると言えます。そして現政権がねらう「行政や社会サービスのデジタル化」の推進と一致しているとも言えるのです。。
そして、この構想の中核が『個別最適な学び』です。それは、一人ひとりの子どもに合わせて指導方法・教材・学習時間帯などの柔軟な提供や設定を行う「指導の個別化」であり、指導の個別化を通して、子ども自身が学習を最適となるように調整する「学習の個性化」です。これをICTを活用しながら追及していくということです。
しかし、この構想には本質的な問題があります。子安潤「ICTの不可能とリアル授業の可能性」よると、
(1) 商品化されたアプりとコンテンツを利用するICT活用授業によって、教師の自律性と専門性が奪われ、授業の画一化が進む。
(2) 一人ひとりの学習者自身のニーズ・要求やつまずきに十分応答するものではないだけでなく、学習者自身の自己決定権の契機を欠いた学習を強いるものとなる。
そして、
(3) 方法として用いられるICTやAIが、教師と子どもを監視・管理するむための手段と化す問題もある。
という問題があげられます。
さてこのような状況の中で、高橋(英)氏は、今後の取り組みとして必要な視点を3つあげています。
(1) 福祉と教育とをつなぐ視点からの学校づくり
・子ども、保護者、同僚が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障するための場所へと学校を作り直す。ICT機器は、対話や関りを取り戻す手段として活用する。
(2) コロナ禍での生活現実、社会的現実を問い、社会参加にひらかれた「学び」を追及していく。
(3) 子どもたちの成長や発達に必要な交わりと関係を保障する場所として、学校の時間と空間、活動を見直す。
・子どもの意見表明権の機会の保障し、共にコロナ後の学校生活の実現に向けて「自治」を追及していくこと。
このような取り組みが、すべて自己責任にされる現在の世界を乗り越え、現実世界に対する共同責任と連帯の世界を立ち上げ、その克服に向かっていけるとしています。
引用-----↑ここまで-----
生活指導誌では、この論文の後、コロナ禍における具体的な生活指導実践が紹介されていますが、この場では、この論文の感想のみ、あげておきます。
●コロナ禍を契機にして、政府が「行政や社会サービスのデジタル化」の推進を教育の面からも推し進めていこうとしていることが分かった。
●その構想が、学習指導要領にもあり、コロナ禍において、やたらと時数確保や、オンライン授業の推進を現場の負担や子どもたちの健康管理を無視して取り組もうとしている背景がわかった。
●「行政や社会サービスのデジタル化」の問題、ICTやAIを利用した『個別最適な学び』の問題点について、現場目線から具体的に明らかにしていく必要がある。
(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
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